牧(まき)

馬牛などを放牧して飼育するための土地と施設。日本には古墳中期以降,牧による馬の生産が導入された。律令制のもとでは主として軍事的目的から牧の制度が国家的に整備され,700年(文武4)全国に牛馬の牧の設定が命じられた。厩牧令(くもくりょう)などの規定では,兵馬司が全国の牧を中央で管轄し,各国の牧の経営・管理は国司の職掌とされた。牧ごとに牧長(ぼくちょう)・牧子(ぼくし)がおかれ,経営の実務に従事した。令制の牧は8世紀後期~9世紀に役割に応じて諸国牧(官牧)・御牧(みまき)(勅旨牧)・近都牧(きんとのまき)の3形態に分化した。「延喜式」にはこれら3種の牧が規定された。政府による牧経営は平安中期には形骸化し,その後は私牧(しのまき)が隆盛した。これらの牧は武士発生の重要な舞台になったとみられる。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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