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ファシズム

fascism[英],fascismo[イタリア] 狭義には第一次世界大戦後のイタリアに登場した国民ファシスタ党の政治運動と思想,支配体制をさすが,一般的には戦間期にヨーロッパを中心に広がった類似の政治運動や支配体制全般を意味する。第一次世界大戦という総力戦を戦ったヨーロッパ諸国では,従軍経験者を中心として旧来の価値観に対する異議申し立ての運動が起こった。彼らは既存の議会制民主主義に反発すると同時に,階級連帯的なナショナリズムを唱えて,ロシア革命を達成したボリシェヴィキにも敵対した。この「第三の道」を模索する少数者の運動が,ロシア革命の波及を恐れる農村の伝統的支配層や都市中間層と結びつくことによって,政権の座に達する国が現れた。イタリアがその典型的な例である。さらに,世界恐慌による経済の混乱は,こうした運動が大衆的な支持基盤を獲得することに寄与した。ドイツにおけるナチズムの政権奪取はその例である。これらの国では,強力な指導者原理のもとに,ときには露骨な暴力を用いながら,大衆の消費生活と余暇の向上に努めることによって国民統合を図った。また,既存の国際秩序に挑戦して対外膨張を企図したが,それは第二次世界大戦という惨事をもたらすことになった。1920年代,30年代には,ヨーロッパのほとんどすべての国にファシズムまたはそれと類似の動きがみられる。なお,日本にも北一輝(きたいっき)の例にみられるように類似の思想や運動が存在したが,30年代以降の軍国主義体制をファシズムとみなすか否かについては見解が分かれている。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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