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冷戦(れいせん)

Cold War 第二次世界大戦後のアメリカとソ連との間に生じた緊張をさす言葉で,「戦闘のない敵対」を意味する。ソ連がドイツ敗北に乗じて東欧・中欧に自国の勢力圏を拡張したのに対して,アメリカが「封じ込め政策」をとったために緊張が生じた。冷戦はその性質上,開始と終了の時期は明確ではないが,通常1946年から47年にかけて始まったとされる。緊張緩和がみられた55年,63年,また72年に冷戦は終わったという見方があったが,いずれもあとで打ち消され,80年代初頭には「新冷戦」が始まったといわれた。89年に東欧の共産党支配体制の崩壊,「ベルリンの壁」の崩壊があり,91年にはソ連自体も解体したので,それ以後は89年をもって冷戦は終結したということがふつうになった。冷戦が第二次世界大戦直後から80年代末まで続いたと考えれば,その間には緊張が和らいだ時期もあったから,冷戦時代とは,政治・経済体制とそれを支えるイデオロギーとを異にするアメリカおよび西側諸国とソ連圏との対抗関係が,国際政治の基本的性格を形成していた時代だったと定義するのが適当である。冷戦は「長い平和の時代」だったという見方もあるが,62年のキューバ危機のように米ソ戦争の危険が切迫したときもあった。アジアではアメリカは共産主義勢力の武力による拡張を防ぐために局地戦争としては大きな戦争をしており,冷戦時代のアジアはヨーロッパと状況が異なっていた。また東アジアにはヨーロッパと違い,中ソという二つの共産主義大国があり,アメリカの同盟国もまとまりがなく,それぞれ個別的にアメリカと結びついていた。冷戦の時代,ソ連は軍事力ではアメリカに対抗できたが,その他の面では遠く及ばなかった。アメリカが経済先進国として復興した西ヨーロッパ,日本との同盟を維持したのに対して,ソ連は中国とも険悪な関係になり,中国は72年に西側との関係を改善した。ソ連がゴルバチョフ時代に冷戦からの転換を志向したのも,米ソの力の格差と自国の国際的孤立のためである。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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