悪人正機説(あくにんしょうきせつ)
親鸞(しんらん)の思想の一つ。「歎異抄(たんにしょう)」の「善人なをもて往生をとぐ,いはんや悪人をや」に代表される。この言葉は醍醐寺本「法然上人伝記」にもみえ,師の法然から継承したとされる。その解釈には諸説あるが,善人とは自力で修行する人,悪人とは煩悩をもつすべての大衆をさす。人々は平等に悪人なのであり,その自覚のない善人ですら往生できるのだから,悪人であることを自覚した他力信仰者の往生は疑いない,と解釈するのが近年の説。親鸞の悪人正機説は,大衆に対する蔑視を捨てた平等思想にもとづくものとされる。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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