1. 用語
  2. 日本史 -ふ-
  3. 武士(ぶし)

武士(ぶし)

武芸・戦闘を専業とする身分,あるいはその身分に属する人々の称。武士は平安中期に本格的に登場し,当初は天皇・貴族の私的警固や紛争解決,反乱・蜂起やその鎮圧などを任としていた。平氏政権をへて鎌倉幕府の成立により,軍事検察部門をになう国家公権をうんだ。室町幕府から戦国大名へと時代がくだるとともに,武士のになう公権力の領域は拡大し,江戸幕府の登場によって社会の全領域にまで及んだ。武士固有の人的紐帯は,主人の従者への軍事的庇護(御恩)と従者の主人への忠誠(奉公)という強固な主従制に支えられていたが,その内実は時代によって異なり,発生当初は離合集散が激しく,時代がくだるとともに強固な制度に発展した。しかし,武士の世界は実力本位であるから,主人の力が弱まれば主従関係が切れるのみならず,従者によって主人が倒される面をもっていた。古来,武士の発生については平安時代の地方行政の弛緩にともない,新興地方領主が自衛の必要から武装化したとする見解が通説であった。近年,発生当初の武士は,特殊軍事貴族・俘囚(ふしゅう)・狩猟民など殺生を業とする諸身分の複合体として登場し,平安末期以降に地方領主と合体して所領経営者の性格をも備えるようになるとみる考え方が有力である。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

この記事が気に入ったらいいね!しよう