番(ばん)

前近代における役務あるいは労働の編成方式の一つで,複数の集団や個人が交代で勤務すること。その集団・個人も番(人)とよぶ。律令制下,官人の勤務形態に長上(ちょうじょう)に対する分番(番上)があり,軍団兵士らも番を組んで交代勤務した。荘園制のもとでは,摂関家の大番舎人(とねり)が著名だが,このほかにも荘園領主が雑公事(ぞうくじ)徴収のために名(みょう)を単位として番を編成。鎌倉幕府の御家人役の中心は,警固番役すなわち京都大番役・鎌倉番役などであり,裁判制度でも引付方(ひきつけかた)に番制度を採用し,建武政権・室町幕府にも継承された。江戸幕府では,大番・書院番・小姓組や江戸町奉行の勤務形態にみられるように,番制度は幕府職制の骨格として機能した。中世~近世の村と町の共同体における防災・警備組織においてもみられる。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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