馬借(ばしゃく)
中世~近世,馬の背に荷物を乗せて運搬した運送業者。11世紀半ばの「新猿楽記」にみえるが,鎌倉時代以降に発達した。越前国敦賀,若狭国小浜,近江国大津・坂本,山城国淀・山崎・木津,大和国八木など水陸交通の接点や街道沿いの地を拠点とし,船で運ばれてきた物資を京都・奈良へ搬入した。各地の問屋の統制下にあったが,寺社のもとでの座的組織の形成,一定交通路の独占的使用や商人的側面もみられる。室町時代になると,広範囲な情報を得やすく,集団的組織力をもつため,しばしば土一揆(つちいっき)の先鋒となった。近世では中世以来の活動の拠点で伝馬(てんま)制下の運送業者を馬借という例がみられる。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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