妃(ひ)

令制で天皇のキサキの一つ。後宮職員令には夫人・嬪(ひん)と並んで2員の妃が規定される。相当位階は四品以上で内親王の官であり,諸王諸臣の官である夫人・嬪と並立していた。中国は同姓不婚の原則があったため,日本の妃に相当する地位はない。「日本書紀」の天智天皇のキサキの序列は,王族,有力中央豪族出自の女,中小豪族・地方豪族出自の女の順に並んでおり,ほぼ令制下の妃・夫人・嬪と対応している。この構造は日本固有のものであった。ただ,皇太子のキサキは天皇のキサキと異なり,藤原安宿媛(あすかべひめ)(光明皇后)が皇太子妃となっている。平安時代に入ると令制のキサキの制はくずれ,嵯峨朝に夫人多治比高子を妃とした例をへて,妃の補任自体がみられなくなる。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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