拳(けん)

指や手または姿勢を示して勝敗を決める遊び。江戸初期に中国から長崎へ伝えられたとされ,その後上方から江戸へ広まったという。数拳(かずけん)と三すくみ拳にわかれる。数拳は指で数を示し相手との合計数をよんで合致したほうが勝ちで,数の名は中国語でいうのが基本。両者同数の場合は相声(あいこ)で引分けとなる。数人ずつ2組にわかれる源氏拳,箸を指の代用にする箸拳もある。伝わった地方により薩摩拳・大坂拳など独特の変形がある。三すくみ拳は3種類の拳が互いに勝ち負けの関係にある庄屋・狐・鉄砲打の庄屋拳(狐拳・藤八拳(とうはちけん)とも)や,虎・和藤内(わとうない)・母親の虎拳,石拳(じゃんけん)などさまざまな種類がある。数拳・三すくみ拳はともに酒席で用いられた。明治維新以後も軍人拳などが考案され,近年の野球拳もその一種。文政年間に出版された「拳独稽古」に詳しい。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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