戸主(こしゅ)
�@「へぬし」とも。古代における戸の法的代表責任者。戸令に戸主には家長をあてると規定される。戸は,50戸1里制によって国郡里の地方行政組織の末端にくみこまれ,戸主は戸口を統率してその監督を行うとともに,計帳作成時の手実(しゅじつ)の申告,班田に際しての口分田(くぶんでん)の受給,調庸の貢納などの義務を負った。�A近代の戸籍法・民法で規定された戸すなわち家の長。江戸時代の宗門人別改帳で各家の筆頭に名前を記された者は,名前人または家主(いえぬし)とよばれていた。1871年(明治4)制定の戸籍法で戸主という言葉が使用されて以後,一家の長をさす語として広まった。明治政府は国民統治の装置として家を位置づけ,戸主を通じて家族員を統制する方針をとった。そのため戸主を戸籍の支配者として,婚姻・養子縁組など送入籍をともなう家族員の身分上の行為に関し,戸長への届出権を付与した。その結果,家族員は身分上の行為について戸主の統轄に服さざるをえなくなった。98年施行の明治民法では,家族員の婚姻・養子縁組などに対する戸主の同意権が規定された。第2次大戦後,戸主制度は廃止。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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