能(のう)

能楽とも。鎌倉末期頃にうまれ現在も演じられている劇形態の芸能。平安時代以来の即興的な滑稽芸である猿楽を母体にうまれた。江戸時代までは能を猿楽ともよんでいた。成立の過程は不明だが,猿楽本来の性格は狂言に継承されている。能は畿内の座を中心に演じられていたが,大和猿楽観世座の世阿弥(ぜあみ)が足利将軍の愛顧をうけてから,大和猿楽とくに観世座が能界の主動的存在となる。室町末期には丹波や近江の猿楽座は大和猿楽四座に吸収されて消滅し,江戸時代には大和四座(のち喜多流が加わり5座)が幕府お抱えとなる。上方をはじめ全国に幕府お抱えではない役者も数多くいて,庶民が能に接する機会はかなり多かった。能が新作されていたのは室町後期頃までで,およそ500番ほどが作られた。能の作者は役者自身で,能柄も多様だが,夢幻能という形式で佳作を多く作った世阿弥の業績が傑出している。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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