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天皇機関説問題(てんのうきかんせつもんだい)

昭和前期に美濃部達吉の天皇機関説が排撃されたことに始まる政治問題。大日本帝国憲法発布当時から天皇の地位については論争があり,大正期になると,国家の統治権は法人である国家にあり,天皇は国家の最高機関とする一木喜徳郎(いちききとくろう)・美濃部らの説と,統治権は神聖不可侵の天皇にあり,それは無制限であるとする穂積八束(やつか)・上杉慎吉の学説が対立していた。1935年(昭和10)2月18日,貴族院本会議で菊池武夫男爵(予備役陸軍中将)が「その機関説は国体に対する緩慢なる謀反(中略)美濃部は学匪(がくひ)」と弾劾し,岡田啓介首相は「学説の問題は学者に委ねるほか仕方がない」と答弁した。これを機に在郷軍人・国家主義者・右翼が広範で強力な機関説排撃撲滅運動を展開。美濃部の弁明から著書の発禁,真崎甚三郎教育総監の機関説反対の訓示,政府の国体明徴に関する声明などがあり,同年10月15日の「我国の統治権の主体は天皇にあり」とする政府の第2次国体明徴声明で運動は終息した。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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