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文献学(ぶんけんがく)

philology[英],Philologie[ドイツ] 狭くは,ギリシア語・ラテン語の研究,両古典語によって記されている文献の本文批判と解釈,そのことをとおしての古典文化の考究を内容とする学問分野をさす。ヘレニズム期のアレクサンドリアに興り,古代・中世をへてルネサンス期のイタリアとフランスで開花し,19世紀ドイツにおいて近代科学としての確立をみた。古典古代史研究にとり基礎的な補助科学の位置を占める。他方この語は,欧米では比較言語学などをも意味し,わが国にあっては考証学,国学,近代における日本古典研究をさす場合にも用いられる。イスラームの文献学は,コーランを記録し,その章句を解釈することから始まった。正確な解釈のために,預言者ムハンマドの言行を伝える伝承(ハディース)の収集が開始され,8世紀以降,これらの伝承を吟味するハディース学が盛んとなった。ハディースの真偽を判断する史料批判の方法は,法学,言語学,歴史学などにも導入され,イスラーム諸学の発達を促した。中国における文献学は,儒教の経典における文字の解釈学から始まった。後漢では馬融(ばゆう)や鄭玄(じょうげん)が中心となって経書(けいしょ)に注が施され,唐では孔穎達(こうえいたつ)らが『五経正義』を撰し,解釈の統一が行われた。これらの学問を訓詁学(くんこがく)という。宋・元をへて清代になり,顧炎武(こえんぶ)らが現れると,経書解釈のよりどころを古典に求める傾向が強くなり,それに伴って書誌的分野の研究が活発となった。これを考証学といい,清朝治下の代表的学問として発展した。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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