ポリス

polis 古代ギリシア人の都市国家。polisの語は本来外敵に対し防御,避難に適する丘を意味した。ギリシア人の都市国家はこのような丘を持つ中心市(アステュ〈asty〉)を軸に形成されたので,周囲の領土を含め国家全体がポリスと呼ばれた。古代社会のなかでポリスに似たものとしては共和政初期のローマがあげられるのみで,都市国家と呼ばれるもののなかでもポリスは独特の性格を持っている。それは前750年頃から成立し始め,法制的には長期にわたって完成された。ポリスは内部の社会構成によってスパルタ型とアテネ型の二つに分けることができる。前者はスパルタとかクレタ島にできた多数のポリスのように,ドーリア人が先住民を征服し,これを奴隷身分におとしいれて形成した国家であり,少数の市民は征服後,割り当てられた世襲地(クレーロス〈kleros〉)を奴隷身分の世襲的農民に耕作させた。この型のポリスでは市民の戦士共同体的性格が特に強かった。一方アテネ型では,征服・被征服に由来する社会階級の対立はみられず,初期には,広義の市民と呼ぶべき共同体成員の間に,貴族と平民の身分的な差異が顕著で,政権は貴族が独占した。しかし重装歩兵戦術の普及とともに中小農民の政治的地位が向上し,さらに前5世紀以降,軍艦漕者としての無産市民の発言権の増大により民主政ポリスの段階に到達した。その頃には,初期には少なかった購入奴隷が家内奴隷として,また工業生産のために多く使われ,市民と在留外人(メトイコイ)の身分的差別も確立した。アテネの例でみると,市民共同体としてのポリスの排他性はソロンの頃にはまだゆるく,民会が前451年に,両親ともアテネ人たる者のみをアテネ市民とする,と決議したとき,排他性が極まって,ポリスは法制的に完成した。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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