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インカ文明(インカぶんめい)

南アメリカ大陸西部の中央アンデス地方に,1430年頃から約1世紀間続いた文明。インカ人はペルー南部高原のクスコ盆地に興り,その北西に住むチャンカ人の侵攻を撃退したのを機に拡張政策をとって,数十年の間に,現エクアドルからチリ北部に至る4000kmにわたる広域を政治的に統一した。征服の過程で先進諸民族の文化を吸収したが,特にペルー北海岸の文化(チムー文化)から学んだところが多い。インカ国家は,文化の異なる多くの民族集団をかかえこんでいたが,言語教育,太陽神信仰を普及させ,神聖王サパン・インカの宗教的権威により政治的統合を図って,ある程度成功を収めた。毎年行う人口調査により人口を正確に把握してキープに記録し,公共事業や軍事のために要員を徴発して,首都クスコをはじめ各地に神殿,城塞,宮殿を建設した。また輸送や移動のため道路網,宿場,飛脚制度を設けた。こうした統合のための努力にもかかわらず,インカ国家は地域主義を克服することができず,エクアドル・インカとクスコ派に分裂して戦っている最中にスペイン人の侵入を受け,1532年に滅亡した。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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