紙(かみ)

105年頃に後漢の蔡倫(さいりん)が発明したとされるが,実際の使用は前漢以前にまでさかのぼる。原料には,樹皮,竹,麻くず,ぼろ,漁網などが用いられた。4世紀頃から中国全土に普及し始め,宋代以後印刷術の発達とともに大量生産され,官僚機構のなかで文書行政の一環として広く利用された。中国の製紙法は,タラス河畔の戦い(751年)でアラブ軍の捕虜とされた製紙工によってイスラーム世界に伝えられた。サマルカンド,バグダード,カイロなどの製紙工場では,亜麻(あま)のぼろを用いて各種の紙が生産され,パピルスや羊皮紙(ようひし)に代わる紙の普及はイスラーム文化の発展に大きく貢献した。この製紙法は,12世紀以後イベリア半島をへてヨーロッパに伝えられた。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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