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国民国家(こくみんこっか)

nation state 近代国家を国民統合に重点を置いてとらえたときの概念。近代主権国家システムは,16~17世紀の西ヨーロッパで生まれたが,初めは主権は国王と結びついて理解されていた。世界の一体化が進行し,特に経済的な連関が深まって,国家間の経済的・軍事的な競合が激しくなり,領域内住民の人的統合が必要になると,その一体性に基礎を持つ「国民」の観念が生まれた。これには,住民間の平等志向や国家形成の自発的意志を重視するアメリカの独立やフランス革命の啓蒙主義的観念と,歴史的経験や文化の共通性を重視するロマン主義的観念とがあるが,この国民によって構成されるとする国家を国民国家という。この観念は,19世紀以来,ヨーロッパ以外にも伝播した。だが実際には,国民全体が平等であったり,共通文化を持つ単一民族であったりすることはほとんどない。したがって国民国家は,政府に反抗する民主的革命や植民地独立運動の解放のイデオロギーとなったり,あるいは国内分裂をさけるため政府が操作する抑圧のイデオロギーとなった。グローバリゼーションが指摘される現在,国民国家の観念は論議の対象となっている。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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