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ラテンアメリカ

アメリカ大陸で,スペイン系,ポルトガル系の言語,文化が卓越したメキシコ以南の地方の総称。アングロアメリカに対する。スペインでは好んでイスパノアメリカと呼ばれる。最近では,非ラテン的文化色の強いカリブ地域(西インド諸島)を別に扱って,「ラテンアメリカとカリブ」という表現も普及しつつある。わが国でいう中南米にあたる。ラテンアメリカの歴史は三つの段階に分けられる。第一は,外部からの影響なしに,アメリカ大陸固有の住民がメソアメリカ文明,アンデス文明などを達成した時代。第二は,1492年のコロンブスの航海以後,19世紀初めまでのスペイン,ポルトガル植民地時代。第三は独立後の近現代である。植民地時代には,各地域とも王室の政治的・経済的統制のもとに置かれて,銀山の開発や砂糖の生産などを行った。労働力不足を補うために多数のアフリカ人が奴隷として導入された。18世紀以後各地で産業が興り,クリオーリョたちの間に自由貿易を望む声が起こったとき,世界市場の開拓に積極的だったイギリスの圧力のもとに,メキシコ,中米の独立および南アメリカの独立が達成された。1889年まで帝政を守ったブラジルを除いて各国は共和制をとったが,大土地所有制やカウディリョの闘争がはびこって政治は安定しなかった。経済的にはイギリス資本が中南米を支配した。19世紀末からアメリカ合衆国の力が強まり,アメリカ‐スペイン戦争によって最後のスペイン植民地として残っていたキューバが独立し,プエルトリコはアメリカ領となった。第一次世界大戦後イギリスの力が失墜してアメリカ合衆国の支配力が決定的となった。各国で,大衆社会の出現とともに社会運動も激化し,メキシコ革命,ボリビア革命,グアテマラ革命,キューバ革命などの激動があいついだ。ポピュリズムの政治が30年代から盛んになったが,安定した民主主義や経済社会の発展はまだ未来の問題である。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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