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奴隷解放運動(どれいかいほううんどう)

emancipation movement 18世紀に西洋諸国で人権思想が発達するとともに,大西洋の奴隷貿易を禁止し,奴隷を解放しようとする動きが生じた。自由平等を原理として掲げたアメリカ革命ののち,北部では奴隷制は漸次廃止されたが,南部では任意の奴隷解放は行われたものの,制度として存続し,奴隷輸入も1808年まで禁止されなかった。19世紀初頭には,奴隷を解放してアフリカに再定住させる運動は南部にも支持があったが,30年代までには南部では奴隷制擁護論が支配的になった。以後,アメリカの奴隷解放運動は北部人だけの運動となり,急進的なアボリショニストが登場し,奴隷の逃亡を助ける地下鉄道運動も展開された。それらは少数者の運動であり,北部人の大半は南北戦争前には奴隷制の地域的拡大に反対するに止まった。奴隷制の全面的廃止はリンカンの奴隷解放宣言ののち,65年の憲法修正により実現した。フランスは奴隷制をフランス革命中にいったん廃止したのち,ナポレオン時代に復活させたが,サンドマング(ハイチ)の旧奴隷たちはみずからの自由を守り,再奴隷化を許さなかった。最大の奴隷貿易国イギリスでは,まず奴隷貿易禁止論が高まり,政府は1807年にそれを禁止し,奴隷貿易禁止の国際化に努めた。カリブ植民地における奴隷制は,33年にイギリスがまず廃止したのをはじめとしてしだいに廃止され,スペイン領キューバの奴隷も70年代から80年代にかけてすべて解放された。ラテンアメリカ諸国中最大の奴隷所有国ブラジルでも,19世紀後半には奴隷解放が進み,80年代には全面的に廃止された。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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