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都市国家(としこっか)

city-state 都市国家の概念は,都市の概念の用法が学者によりまちまちであるために,さまざまに使われている。世界史のうえからみて原始時代から文明が進み,初期の国家が形成される場合,いわゆる部族国家のように比較的小さな集団が小さな地域を占めて分立する。このような小国家の中心の集落が,その領域の唯一の,あるいは圧倒的に重要な集落で,城壁とか市街とか,中心の神殿や王宮,また公共の施設を備えていた場合にこれを都市と呼ぶこととすれば,都市国家は古代の統一帝国の成立する前段階において至るところにあったと推測できる。中国についても一部の学者によりその存在が主張されており,また初期のインドやメソポタミアおよびフェニキアについてもそれが語られる。しかし都市の定義を厳密にしぼって,自由を自覚し,民会を通じて国政を担当していく市民の共同体の存在を「都市」の条件とすれば,前記の諸地域にそのような市民団がある時期に存在したことは実証されておらず,その点からすれば,厳密な都市概念に立つ都市国家はヨーロッパのものとせざるをえない。前8世紀頃から成立したギリシア人のポリスがそれを代表し,共和政初期のローマもこの条件をみたす。そこでは初めはおおむね広義の市民共同体のうちの少数者たる貴族たちが政権を独占したが,参政権はしだいに中・下層の市民の間にまで広げられ,直接民主政の原理に立つ民会が国政の最終決定権を握った。なおヨーロッパの中世後半から近世初頭の都市自治体,特にイタリアのそれは厳密な意味での都市国家と呼ばれてよい。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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