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ユダヤ人(ユダヤじん)

Jews[英],Juden[ドイツ] セム語族に属し,ユダヤ教を信じ,世界中に散在する民族。みずからはイスラエル人と称し,他民族からはヘブライ人と呼ばれ,バビロン捕囚以後ユダヤ人という呼称が広まった。祖先は前1500年頃メソポタミアからカナーン(パレスチナ)に移住してきた。エジプトへのさらなる移住と帰還(「出エジプト」)をへてカナーンに定住,前1000年頃民族王国を建設したが,ソロモン王の死(前922年頃)後王国は南北に分裂,それぞれアッシリアとバビロニアに滅ぼされた(前721年,前586年)。バビロン捕囚から帰還したユダヤ人は,以後主にユダヤ教によって宗教的に結ばれることになる。前63年ローマの支配下に入り,紀元後30年頃総督ピラトのもとでイエスの処刑が行われた。その後ローマの支配に対する2度のユダヤ戦争(66~70年,132~135年)に敗れ,首都イェルサレムも廃墟と化した。パレスチナはその後ビザンツ帝国,イスラーム教徒などに次々と支配され,ユダヤ人はその間世界各地に離散(「ディアスポラ」),西はイベリア半島,東は中国まで移住した。移住先のユダヤ人は多くの場合異教徒として差別的な扱いを受け,特に十字軍の時代のヨーロッパで激しい迫害を受けた。彼らは土地所有を認められなかったため,職業は金融,商業に偏り,それがまた攻撃の口実になった。啓蒙思想とともにユダヤ人解放思想が生まれ,フランス革命以後,19世紀のヨーロッパ各国でユダヤ人(ユダヤ教徒)にも公民権が与えられるようになったが,反面,民族的反ユダヤ主義(反セム主義)の運動も現れ,ロシアでは「ポグロム」と呼ばれる迫害が繰り返された。しかし史上最大のユダヤ人迫害は,反ユダヤを国是としたナチス・ドイツによって行われ,500~600万のユダヤ人が強制収容所などで殺された(「ホロコースト」)。この間アメリカに移住するユダヤ人も多く,またパレスチナにユダヤ人国家を建設する運動(シオニズム)も起こり,1948年イスラエル国が建国されたが,アラブ諸国やパレスチナ人との紛争が絶えず続いている。2000年現在,全世界で推定1400~1500万のユダヤ人のうちイスラエルに約500万,アメリカ合衆国に約600万が在住している。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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