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わからん。

哲学者 西田幾多郎 京都帝国大学での講義の言葉

京都帝国大学での西田幾多郎の講義、黒板の前をクマのように行ったり来たりしながら、考えながらぽつり、ぽつりと語る。ある時、動きをとめた西田先生はそのまま考えこんでしまい、しばしの沈黙の後、「わからん」と言ったままノートをたたみ、「今日はこれで終いにする。」と講義を終えて教室を出て行ってしまった。みずからが主体となって真剣に考えぬくことの重さの中から出た「わからん」の一言。気の利いた思いつき、他人の口真似、受け売りをする饒舌にくらべて、いかばかりの真実味があることか。ネットやハウツー本で他人から安易に情報を得て、性急に「答え」を求めようとする現代人は、このみずから考えた末の「わからん」の重みを噛みしめるべきであろう。人生には「わからん」こともあり、それとみずからが格闘して考えぬくところに哲学をする値打ちがある。

もういちど読む山川哲学 ことばと用語、7ページ、2015年、山川出版社

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