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史跡・文化財を通して地域の歴史と文化を読み直す、新シリーズ第一弾。『日本史のなかの埼玉県』刊行の意義

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いままでにない地域史の新シリーズの第一弾『日本史のなかの埼玉県』を刊行しました。歴史教育に携わる方々のみならず、より広い読者層に向けて、地域史の魅力を発信したいという思いから企画・編集しました。古代から現代までの埼玉県の通史、史跡や文化財、県内のおもな祭礼や行事、埼玉県の年表や成立過程など、より深く埼玉県を知り、そしてあらたな魅力や誇りを感じる1冊となっています。本書は、埼玉県の歴史・文化・特徴を、文化財・史跡を中心に紹介し、一方で、各地域における中央や世界とのつながり(交流)を重視した項目を多く掲載しています。(山川出版社編集部)

地域は日本史や世界史と繋がっている

稲荷山古墳出土の鉄剣に刻まれた銘文からわかるヤマト王権の結びつきや、室町幕府を巻き込み、全国に先駆けて戦国時代が始まった舞台地首都江戸を支えた物流、交通の要衝としての埼玉県の江戸時代、世界で注目されている「BONSAI」の発信地・大宮盆栽村など、単に地域の歴史なのではなく、日本史や世界史の大きな流れともつながっていることをあらためて確認できるような記述をしています。

律令時代に郡家の行政実務を行った大型建物の跡(幡羅遺跡:深谷市教育委員会提供)

本書のコラムで詳述していますが、律令時代の武蔵国には「高麗(こま)郡」と「新羅(しらぎ)郡」という朝鮮半島の国名に由来する郡がありました。『続日本紀(しょくにほんぎ)』には、これらは日本列島に亡命した高麗人や、同じく渡来した新羅僧を移住させて生まれたという記述があります。

高麗郡が武蔵国につくられた理由を記録した史料は残っていませんが、高句麗の王族であった高麗福徳(ふくとく)という人物が高句麗滅亡前に日本に亡命し、何らかの理由により武蔵国入間郡に移り住んでいたことがわかっています。

埼玉県の歴史や文化を、史跡・文化財を通じて見直してみる

本書では、紹介する文化財・史跡は、地域史の要素を深める目的で国指定・未指定にかかわらず選定しています。文化財には国指定のものだけではなく、県指定、市指定、町指定、村指定の文化財も数多くあります。これらは地域の人々にとって、より身近な存在として知られているもので、本書では積極的に取り上げています。

川越城本丸御殿

県指定文化財である「川越城(河越城)跡」は、太田道真・道灌親子が築城した扇谷上杉氏の拠点となった城郭であり、城跡の大部分は市街地となっているが、本丸御殿は川越藩当時の現存する御殿建築として全国的に貴重であるとともに、明治初期には入間県庁舎として二次利用されました。

このように、本書では埼玉県の特徴あふれる歴史や文化を、史跡・文化財をとおして見直すことをテーマとしています。

縄文海進で誕生した奥東京湾、東日本屈指の巨大古墳群、割拠する武蔵武士、戦国動乱の主戦場、首都江戸を支えた産業の中心地ーー多様な特徴から他地域や世界とのつながりを知る!(本書帯より)

ISBN:978-4-634-24901-1

著者:水口由紀子=編 刊行:2023年3月

仕様:B6変(120×182㎜)192ページ

山川出版社 https://www.yamakawa.co.jp/product/24901

Amazon https://amzn.asia/d/4VZ7Hki

楽天ブックス https://books.rakuten.co.jp/rb/17410618/

執筆者紹介(※50音順)

新井浩文(あらい・ひろぶみ) 1962年生まれ。埼玉県立文書館主席学芸主幹
井上かおり(いのうえ・かおり) 1969年生まれ。埼玉県平和資料館主幹
杉山正司(すぎやま・まさし) 1958年生まれ。元埼玉県立文書館館長
関義則(せき・よしのり) 1959年生まれ。国士舘大学非常勤講師。元埼玉県立歴史と民俗の博物館館長
田中和之(たなか・かずゆき) 1962年生まれ。元蓮田市教育委員会。株式会社三協技術文化財調査室室長代理
根ヶ山泰史(ねがやま・やすふみ) 1981年生まれ。埼玉県立歴史と民俗の博物館学芸員
水口由紀子(みずぐち・ゆきこ) 1962年生まれ。埼玉県立さきたま史跡の博物館主任専門員兼学芸員
宮瀧交二(みやたき・こうじ) 1961年生まれ。大東文化大学教授

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