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人間とは"世の中"であるとともに、その世の中における"人"である。だからそれは単なる"人"ではないとともに、また単なる"社会"でもない。

倫理学者 和辻哲郎『倫理学』

人間はもともとは「じんかん」と読み、文字通り人と人の間、世の中を意味した。やがて、それが世の中に生きる一人一人をもさすようになった。したがって、人間とは、たんなる世の中の駒や歯車でないと同時に、また、世の中から孤立した自己でもない。人間であるということは世の中と交わり、そこで自分の役割を果たしながら自己を活かすことであり、和辻哲郎はそれを間柄的存在とよんだ。人と人との間柄において自己のポジションをもつことは、そこに割り当てられた役割や使命を果たすことであり、自分の居場所をもつことである。自分の持ち場を見出すことが世の中での自己の「在り方」であり、それが将来に向かう自己の「生き方」を定める足場にもなる。家庭人として、職業人として、地域や組織の一員として、世の中で自分の「在り方」「生き方」を見出し、それを自己の「生き方」に活かすことが、人と人の間に生きる「人間」なのである。

もういちど読む山川哲学 ことばと用語、12ページ、2015年、山川出版社

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