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心とは山河大地なり、日月星辰なり。

鎌倉時代 曹洞宗の開祖 道元『正法眼蔵』

ふだんは物と心は別だと考えている。もちろん心はたんなる物ではない。ではその心とは何か?と問われると、すぐに答えは出てこない。禅では心を無にせよ、無心に徹せよと説かれる。その無心の境地に、あたかも曇りなき鏡に万象が映し出されるように、はじめておのれを活かす仏の命の世界が映る。道元によれば、それは山川草木、日月星辰、この世界のすべてである。世界のすべてに自分が生かされていること、その世界の命をおのれの命として生きていることに目覚める時、新生の体験が訪れる。道元はそれを身心脱落と言う。おのれの身も心も、すべてを世界に解き放ってみよという教えである。広い海を前にして、青い空を仰いで、両手を広げてそれを抱え込んでみよう、そこに飛び込んでみよう、そして、その大きな世界に抱かれた命の感覚を取り戻してみよう。

もういちど読む山川哲学 ことばと用語、78ページ、2015年、山川出版社

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