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社会の中で生きていけないもの、自分自身で充足しているためにその必要のないものは、獣か神である。

古代ギリシアの哲学者 アリストテレス 『政治学』

森の中の一匹狼は本能だけで生きていけるから、仲間はいらない(実際のオオカミは群生動物だが)。神は全知全能であるから誰の助けもいらず、これも一人だけで十分である。人間はその本性から共同体をつくって他者とともに分業し、協力するものであり、共同体から引き離されては生きていくことはできない。一人では自足できない人間が集まって、はじめて人間らしい生活を成り立たせる自足の条件を完全にそなえた共同体が生まれる。アリストテレスいわく、人間は社会的動物。他者とコミュニケーションをとり、分業し、連帯する社会は、人が生きていくための必須の場であり、そのような社会の成員となることが一人前になることである。社会の連帯と分業をベースにして、一人ひとりが自己の個性と能力を活かし、また、競い合うこともできる。職場での毎朝の挨拶、社会というチームのメンバーとしてのコミュニケーションの始まりである。

もういちど読む山川哲学 ことばと用語、64ページ、2015年、山川出版社

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