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人間の弱さは、それを知っている人たちにおいてより、それを知らない人たちにおいて、ずっとよくあらわれている。

フランスのモラリスト・科学者 パスカル 『パンセ』

人間はだれしも弱さをもっている。その弱さを自覚している者は、弱さを払拭することはできないにしても、少しでもおのれの弱点をカバーし、セーブしようと努めることはできる。また、おのれに対しては謙虚になり、同じような弱点をかかえた他者には寛容な心がもてる。そのような自覚のない者はいっこうに何も気づかず、強がっているだけである。おのれの弱さに甘えてはいけないが、自慢げに自分のことを語り、虚勢を張って強がる者は、本人は得々としていてもまわりがしらけ、閉口し、迷惑なことがある。パスカルは語る、「世間の人は舞踏会で踊ること、ゲームに勝つこと、王になることを考える。王であることを考えるが、人間であることが何かは考えない」。王になることを考える前に、まず、一人の人間としての自分を謙虚に振り返ってみよう。人間の弱さを知っている者は、王のように空しき栄華を求めず、威張らず、自分の傍らで悲しんでいる人にそっと救いの手を差し伸べる優しさを持つことができるだろう。

もういちど読む山川哲学 ことばと用語、42ページ、2015年、山川出版社

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