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いかに生きているかということと、いかに生きるべきかということは、はなはだしくかけ離れているから、なすべきことのゆえに、現実になされていることを顧みない人は、身の破滅を招くにいたる。

ルネサンス期の政治学者 マキャヴェリ 『君主論』

人間がいかに生きているかという現実と、いかに生きるべきかという理想は、はなはだしく乖離している。したがって、理想を追うあまり現実を顧みない人は、足元をすくわれてわが身を滅ぼすことになるという、マキャヴェリの忠告である。若いころは理想を夢想するが、現実の人生に出てみれば、仕事にしても結婚にしても、自分の思い描いた理想どおりに行かないことをいやというほど味あわされる。理想の夢は砕け散り、日々の仕事や生活に追われ、現実の中で立ち往生することもしばしばである。たしかに現実の重みを知らない理想主義は、楽天家、若気のいたり、お坊ちゃまの遊びと言われよう。しかし、逆に理想が自己に向かうべき方向を指し示す指針をならなければ、現実に右往左往し、翻弄されるだけである。現実を前に無力感を感じてあきらめる前に、現実に対峙しつつ、地に足をつけて粘り強く理想の方向へと駒を進めていく、重心を低くかまえた理想主義が必要ではないか。

もういちど読む山川哲学 ことばと用語、38ページ、2015年、山川出版社

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