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善なる意志は、みずからの中にすべての価値をもち、一つの宝石のように、それだけで光り輝く。

ドイツの哲学者 カント 『人倫の形而上学の基礎づけ』

世の中には、才能、体力、財産、地位、美貌など、善いとされるものは数多くあるが、無条件に善いと認められるものは、善いことをなそうとする意志、英語ではgood will、善意志のみであるとカントは言う。なぜなら、他の善いものは、善意志に使われることではじめて有益になるからである。たとえあなたの善意が相手に通じず、それどころか裏目にで、逆恨みされ、失敗したとしても、あなたが善意志によって行動しようとしたこと自体の価値はなんら損なわれず、ダイヤモンドのように傷つかず輝きを失わない。逆に好評な結果をえたとしても、それが下心のある不純な動機から出ているならば中身は貧しい。カントは人間のモチベーションに尊さを見出す動機説を説いた。これに対してビジネスや勝負事の世界では、なんとしても結果を出せという結果説が主流である。うまく立ち回って要領よく結果を出すか、愚直におのれの信じるところを押し通すか、その場その場での人生の選択である。

もういちど読む山川哲学 ことばと用語、21ページ、2015年、山川出版社

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