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平家物語(へいけものがたり)

中世開幕期の内乱を平家滅亡の歴史として描く軍記物語。12巻だが諸本により異同がある。原形作者は信濃前司行長(しなののぜんじゆきなが),協力者は生仏(しょうぶつ)説が有力。諸本間の異同は,広まる過程での数次にわたる複数の作者の介在を思わせる。行長作者説を伝える「徒然草」は「後鳥羽院の御時」(1183~1221)成立説。東山文庫蔵「兵範記」紙背の僧頼舜(らいしゅん)書簡(1240),永観文庫蔵「普賢延命鈔」紙背の深賢書状(~1259),「普通唱導集」(1302)上本二の芸能・琵琶法師の記事「勾当(こうとう),平治保元平家之物語,何皆暗而無滞」からみて,13世紀中にほぼ形を整えたらしい。諸本は各種に分類されるが,平曲台本の語り本系(当道(とうどう)系),著述による読み本系(非当道系)に大別できる。より古態をとどめる後者は,さらに「源平闘諍(とうじょう)録」などの略本系と延慶本,「源平盛衰記」などの広本系にわかれる。広略両系の前後は定かでないが,諸本それぞれの成立圏をうかがわせる特徴がある。一方,語り本系は琵琶法師の座である当道座が個別の語りを集約したもの。1371年(応安4・建徳2)成立の覚一(かくいち)本で完成し,以後は灌頂巻(かんじょうのまき)を保持する一方流とこれを立てない八坂流の2系統が行われた。語り本・読み本両系は,中・近世の諸文芸や能・幸若舞(こうわかまい)など諸芸能に素材を提供。直接的な影響作品を介して間接的にもうけいれられたほか,地方遊行の琵琶法師を通じて各地の平家伝説を生んだ。各古典文学全集などに所収。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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