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縄文土器(じょうもんどき)

縄文文化にともなう土器の総称。E.S.モースが大森貝塚出土の土器に対して用いたcord marked potteryの語が名称の由来。cord markははじめ索紋(さくもん)と訳されたが,白井光太郎が「縄紋」の訳語をあてた。技術的に轆轤(ろくろ)・回転台による成形技術や窯(かま)による焼成技術をもたない段階の素焼きの土器。文様装飾に富み,縄文を多用する点に造型的な特質がある。人物や動物を表現する文様や大型の把手(とって)・波状口縁なども大きな特質。造型と文様は変化に富み,縄文時代を通じて日本列島各地に地域性の強い70以上の様式が継起して盛衰をくり返した。この様式は,現代の焼物の伊万里(いまり)・唐津(からつ)・備前(びぜん)などの流派と同じく,伝統的な固有の製作流儀と共通する気風をそなえた土器群をさす。早期の押型文系土器,前・中期の円筒土器,晩期の亀ケ岡式土器などは,代表的な様式として著名。存続年代はきわめて長く,約1万年にわたる変遷をたどり,現在では草創期・早期・前期・中期・後期・晩期の6期区分を設けている。早期~晩期の5期は,1937年(昭和12)に山内清男(やまのうちすがお)が提唱したもので,押型文系土器や貝殻沈線文系土器に代表される尖底(せんてい)土器の一群を早期,諸磯(もろいそ)式や円筒下層式を前期,勝坂式や加曾利(かそり)E式などの厚手派を中期,堀之内式や加曾利B式などの薄手派を後期,亀ケ岡式とその並行型式を晩期に,それぞれ編入したものである。草創期は,縄文土器の起源にかかわるさらに古い土器群の発見にともない,早期に先行する新たな大別として追補された。形式(器種)には深鉢・鉢・台付鉢・浅鉢・皿・壺・注口(ちゅうこう)土器・有孔鍔付(ゆうこうつばつき)土器・釣手(つりて)土器・香炉形土器・異形台付土器・器台形土器などがあるが,縄文時代を通じて最も基本的な形式は煮炊き用の深鉢で,草創・早期にはこれが唯一の形式であった。形式分化は前期に始まり,中期以後顕著となる。とくに後・晩期には浅鉢・注口土器・壺が増加するとともに,精製・粗製の区別も生じた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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