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上代特殊仮名遣い(じょうだいとくしゅかなづかい)

上代の文献の万葉仮名にみられる13の音に関する文字の使いわけ。橋本進吉はこの2種類の表記を甲類・乙類と命名。エ・キ・ケ・コ・ソ・ト・ノ・ヒ・ヘ・ミ・メ・ヨ・ロ(「古事記」ではモにも)に使いわけがある。たとえば「秋・息…」には「君」と同じ万葉仮名(岐・企・吉…)が使われるが,「木・霧…」には「月」と同じ万葉仮名(紀・奇…)が使われ,これらの漢字のグループが混同されることはない。この区別は,イ・エ・オ段の音節に現れることから母音の差によると考えられ,上代の母音が8母音とする説もあった。最近は母音の差によるのはオ段のみであり,イ段の差については子音の差であるという服部四郎・松本克己らの説もある。ただしエはア行の「エ」とヤ行「ヱ」の差で,母音の差ではない。万葉仮名は中国の韻書を調査することによって,当時の音(音価)を推定することができる。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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