儒学(じゅがく)
孔子を開祖とし孟子や荀子(じゅんし)によって形成された,儒家とよばれる思想流派の思想を,教説とその典拠とされる古典の研究を重視する立場からみたよび方。教えとして信奉実践する立場からは儒教という。中国では,前漢の武帝のときに儒学が国教とされて以来,老荘・陰陽五行説・仏教などの諸思想を摂取しつつ儒教古典の新しい解釈をうみだし,さまざまな儒学説を形成するとともに,清末まで2000年余にわたって中国の王朝支配の体制教学として君臨した。儒教は紀元前後以来,朝鮮半島を通じて日本に伝来し,日本の伝統文化の形成と活性化に大きな役割をはたしたが,学問としての儒学が体系的に摂取されたのは江戸時代である。戦国末~近世初期に明末の朱子学文献が大量に流入し,藤原惺窩(せいか)や林羅山(らざん)・山崎闇斎(あんさい)らが仏教から儒学に転換したのをはじめ,近世社会の特質によって修正をうけつつ,朱子学派・陽明学派・古学派・折衷(せっちゆう)学派などさまざまな儒学説をうんだ。政治体制とのかかわりが弱かった分,民間の儒者による儒学説の多様な展開を現出し,幕末~近代初期には,その普遍的側面が西洋の近代思想を受容する思想的媒介ともなった。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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