自由民権論(じゆうみんけんろん)
明治期の自由民権運動の理論。天賦人権論を基礎とする,政治的・社会的自由の獲得を中心としたブルジョア民主主義論。1874年(明治7)の民撰議院設立建白と論争を契機に形成されたが,当初は国家を支える自主的精神論の性格が強かった。79年の植木枝盛(えもり)の「民権自由論」あたりから市民的自由の確立の方向に発展し,その実現のための国会開設・憲法制定・地方自治などの具体的要求もうまれた。民権論の到達点は,新聞の論説や著作物,全国の民権結社の趣意書や私擬憲法案に示されており,なかでも植木枝盛の抵抗権・革命権の主張,「憲法草稿評林」の皇帝リコールの主張,中江兆民(ちょうみん)の小国主義の主張は,そのすぐれた達成点である。運動が後退し,国会・憲法が実現されていくなかで,自由民権論も衰えた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)
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