職(しき)

�@大宝・養老令制の官司の等級の一つ。八省の被管官司には職・寮・司などがあるが,このなかで最も格が高い。四等官の名称は順に大夫・亮・進・属で,これらの官員の官位相当の高さから二つの等級にわかれる。中務(なかつかさ)省被管の中宮職のみが1級高く,以下に宮内省被管の大膳職や,京を管轄する左右京職,難波宮および津国を管轄する摂津職(せっつしき)があった。令外官(りょうげのかん)の造宮職・修理(しゅり)職もこれに準じる。�A平安中期~中世の社会で,私的な財産と化した官職・職務。職の系譜上の起源は令制官司の職にあるが,10世紀以降,ある種の職務や支配体制上の地位は,それにともなう収益・得分とともに相伝・譲与されるものに変質し,「職」の名を付してよぶようになった。まず郡司の地位が郡大領職・少領職・郡司職などと表示され,ついで私的な財産として相伝・譲与されるようになった。このような公権・官職の私財化が郡司から始まるのは,もともと郡司が世襲されることの多い特異な官職であったことによろう。荘園公領制の展開とともに,荘園では本家職・領家職・預所(あずかりどころ)職・下司(げし)職などが,公領では郷司(ごうじ)職・保司(ほうし)職などがうまれ,一つの荘園あるいは公領は,いくつかの職が上下に重なりあって支配・領有された。在京の貴族や寺社が諸国に広く分布した本家職や領家職などの職を知行しえたのは,朝廷や国衙の力によるところが大きく,その意味で職の秩序は,国家の支配体系としての性格をなお残していた。 (山川 日本史小辞典(改訂新版), 2016年, 山川出版社)

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