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われよく人を愛すれば、人またわれを愛す。

江戸時代の儒学者 伊藤仁斎 『童子問』

人は愛されることを願うが、愛されたいならば、まず自分から人を愛することである。愛されることは容易だが、こちらから愛することには勇気やエネルギーがいる。伊藤仁斎は、孔子の教えの中核である仁を愛であると解釈した。一人を愛するのでもだめ、あちらは愛するが、こちらは愛さないのでもだめ、あらゆる時に、あらゆる場所のすみずみにまで愛が行き渡るのが、本物の愛であると説く。大きな愛のエネルギーである。人びとを愛することは自分が生きるためのエネルギーであるとともに、他者を活かすエネルギーでもある。愛し返されることを目的とするのではなく、みずからが愛のエネルギーを発揮することそのものに喜びが伴うのが、愛の素晴らしさであろう。仁斎は四十歳をこえて二十も年下の若い妻をめとり、その死後はさらに若い妻をめとって多くの子をもうけた。色を好み、愛の甘美さを味わうことも心得ていた人であったのだろう。

もういちど読む山川哲学 ことばと用語、48ページ、2015年、山川出版社

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